Y’s式 二世帯住宅の提案
前回 標準仕様でここまで出来る。二世帯住宅の提案 ① 2-1 コチラ⇒
新しい試みとして、Y’sの完成物件を住宅建築に造詣の深いプロライターの方に、客観的な目線を交えて、論評をして頂く企画内容になります。
詳細の説明などは、Y’sにて補足をさせて頂きます。
今後も自社目線での解説や紹介だけでなく、住まい手の目線でライターの方の解説をお楽しみ頂くつもりです。
筆者紹介
中村謙太郎 まちなかで土壁の家をふやす会 事務局 コチラ⇒
住宅を中心とした建築専門のフリーランス編集者。1992~2010年『住宅建築』、2010~2013年『チルチンびと』編集部に在籍。
「畳コーナー」、1階と2階の違い
かつて日本家屋の和室は「続き間」とも呼ばれる通り、襖の開け閉てで領域を伸縮し、複数の用途に対応する、融通無碍な空間装置だった。
それが住まいの洋式化につれて、壁に囲まれた部屋として扱われ、床の畳以外は洋間とほぼ変わらなくなってしまった。
もっとも時代が一周回ったのか、近年は「畳コーナー」と称し、襖を引き込めばリビングやダイニングと一体化する、ある意味では先祖返りしたともいえる和室の事例が増えてきた。
この住まいの上下階にある和室も「畳コーナー」の一例である。
2階の畳スペースは、他の床よりあえて15cm段差
あえて段差を設けるメリットも多い
通常、Y’sでは和室の床高をリビングの床より15センチ高くしている。それはダイニングチェアに腰掛けた人やリビングのソファに腰かけた人との目線がちょうど合い、またリビング床のほこりが和室に入り込むのを防ぐためであり、この家の2階でもその手法を適用している。
一方、1階は来客が多いことからリビングと和室を自由に行き来できるよう、あえてリビングと和室の床高をそろえている。
仏壇が1階和室に用意されていることにも触れておきたい。
通常は奥まった仏間や寝室に鎮座する仏壇だが、リビング・ダイニングから見えれば、ご先祖への感謝の念を日々忘れずに過ごせるというもの。来客に手を合わせてもらうのもいいだろう。
仏壇側に向かって左にあるささやかな窓も、ちょうど仏壇の前に正座したときの目線の高さに合わせている。
収納部、向かって左端は仏壇。普段は閉じる事も可能
ちなみに、1階天井、リビングから和室の手前まで、ダウンライト用のレールが埋め込まれているのは、どこに人がいても照らせるという、来客が多い家だからこその工夫である。
住まい方に応じて柔軟なつくり手の対応が、何ともうれしい。
使用用途により、あえて段差は設けない場合もある
収納のつくりにも手を抜かない
マンションでも戸建てでも、収納の中まで予算はかけられないとばかりに、合板張りで済ませるのが一般的だ。
しかし、湿気がこもりやすい収納に合板という選択は、調湿性の点で力不足の感が否めない。
といったわけでY’sは、押入れから下駄箱に至るまで、造り付け収納の内部は調湿性にすぐれた桐材のパネルを用い、さらに引き戸の表裏両面和紙貼りを標準仕様としている。
視覚的にも、色付き和紙のナチュラルな色合いが、自然素材の空間に絶妙にマッチする。
見た目の美しさと性能を兼ね備えた日本の知恵が、住まいの隅々に生かされているのだ。
収納内の壁天井は桐。戸の両面に和紙(土佐和紙)
暮らしに寄り添う造り付け家具
造り付け家具と置き家具。好みが分かれるところだが、住み始めてから最も差が出るのは大地震の時ではないだろうか。
造り付け家具が住宅と構造的に一体化しているのに対して、置き家具は分離しているため、住宅の内壁とぶつかり合って揺れを増幅させ、棚の中身を散乱させるだけでなく、置き家具自体が転倒する恐れもある。
子供部屋とご夫婦寝室の間仕切り壁は、両面書棚。収納力だけなく、遮音性も上がります
かといって、住宅展示場で選んだハウスメーカーに造り付け家具を注文すると、オプション扱いで割高になる可能性が高い。
その点、Y’sのつくる住宅では、棚からキッチンまで、自社製作の造り付け家具が標準仕様に入っているから安心だ。
左はTV台。下段は『床下エアコン』収納部
注文住宅の造り付け家具は、住まい手の特性に合わせて「かゆいところに手が届く」ような、きめ細やかな対応が魅力である。
たとえばこの家の1階では来客をもてなすための飲み物や料理を置くためのカウンターが、キッチンとリビングの間に設けられている。
使い勝手は十人十色。お好みに合わせて、一から設計を行います
このカウンターがキッチンの目隠しにもなるし、カウンターの下に食器をしまうこともできる。
かたや、奥のキッチンも住まい手に合わせたつくりになっている。
1階 親世帯のキッチン。基本、ご夫婦ふたりの使用ですが、使い勝手良くまとめられています
シンクの左側にゆとりのスペースがあるのは、水切りカゴの置き場所だから。当然、電化製品や台所用品の置き場所も全て決めた上で製作している。
住まいに合わせて暮らすのではなく、住まいが暮らしに寄り添うべきだという、つくり手の姿勢がよく分かる。
2階 子世帯のキッチン。子育て世代でもあるのでキッチンは広く
キッチン奥にはパントリー 先はリビングへの動線もあり
来客を出迎えるに相応しい玄関土間
玄関は家族が出入りする場所であると同時に客を出迎える場所でもあるから、かつての日本家屋は玄関の意匠に工夫を凝らした。
そのような大事な場所だから、左官仕事に思い入れのあるワイズとしては、土間を左官で仕上げたいところ。
そこで標準仕様にしているのが洗い出しである。
上がり框の下に常夜灯にもなる照明
洗い出しとは、セメントに小砂利を混ぜたものを塗り付け、半乾きの状態でセメントを洗い流し、小砂利を浮き上がらせる左官仕上げのことだ。
この家の玄関土間も洗い出しで仕上げている。
小砂利の表情がチャーミングで、水に濡れても滑りにくく、靴の上からも足触りがいい。
左官の良さを五感で感じられる仕上げなのだ。
障子とプリーツスクリーン、選択のポイント
昨今の障子はほとんど工業製品で、組子のデザインもほぼ画一化されている。
しかしY’sの障子はすべて住まいに合わせてデザインし、手づくりした、まさに一品もの。
障子のデザインは個々に合わせて都度、デザイン、設計を行います
この家でも1階の掃き出し窓の内窓として用い、強い日射や寒さをやわらげている。
一方、2階の腰窓のように面積が小さい場所では、プリーツスクリーンを選択している。
障子のような風合いの生地を細く折りたたんで上げ下げするブラインドの一種で、手軽な操作で自然素材の空間にマッチし、障子同様に日射をやわらげてくれる。
写真はシングルタイプ。断熱性が高いダブルタイプもあり
住まいづくりの全てのノウハウが、つくり手の掌中にあるから、適材適所で臨機応変に対応してくれるのだ。
設計は、決してデザインからは入るのではなく、使い勝手が良いプランニングが良いデザインになる
建具は無垢材で
室内の部屋扉や引き違い戸には、枠材の表裏に薄い合板を貼り付けたフラッシュ戸を用いられることが一般的である。
フラッシュ戸は、火に耐えられるのはせいぜい5分程度である。燃えぬけてしまう。
それが納得できないY’sは、厚さ30mmの無垢材を建具本体の標準仕様にしている。
木材が燃える速さは1分あたり1㎜と言われており、ならば厚みのある無垢材のほうが燃え抜けるまでに30分は時間がかかるはずというのが根拠だ。
写真の仕様は、杉 板目タイプ
無垢材は経年変化で、より味わい深い風合いになります
とは言っても無垢板は重いのでは?という心配はご無用。指一本で動かせるようになっている。
無垢材の利点は火に強いだけではない。年を経るごとに色合いが深みを増すのは無垢板の最大の魅力だろう。
用・強・美を兼ね備えたものづくり。建具ひとつをとっても、つくり手としての矜持が垣間見える。
建具材は、他に杉 柾目。桧 板目・柾目があり
現代のテーマに挑んでこそ現代民家
思い起こせば、かつて日本の住まいは多世帯が当たり前であり、「二世帯住宅」という言葉自体、1975年にヘーベルハウスが同名の商品化住宅を売り出すまで存在しなかった。核家族の住まいが大多数を占める現代ならではのテーマといえるだろう。
そこに挑みつつ、地域の気候風土を反映し、できるだけ地域周辺の素材を用いたこの住まいに、私は現代民家のあるべき姿を見出すのだ。
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