Y’s式 二世帯住宅の提案
新しい試みとして、Y’sの完成物件を住宅建築に造詣の深いプロライターの方に、客観的な目線を交えて、論評をして頂く企画内容になります。
詳細の説明などは、Y’sにて補足をさせて頂きます。
今後も自社目線での解説や紹介だけでなく、住まい手の目線でライターの方の解説をお楽しみ頂くつもりです。
筆者紹介
中村謙太郎 まちなかで土壁の家をふやす会 事務局 コチラ⇒
住宅を中心とした建築専門のフリーランス編集者。1992~2010年『住宅建築』、2010~2013年『チルチンびと』編集部に在籍。
分かれているようでつながっている二世帯の距離
一般的に、親世帯と子世帯が同じ敷地に住む二世帯住宅は、玄関から水回りに至るまで、何を共有して何を分けるか、答えは家族の数だけある。
たとえばこの住まいでは、1階に親世帯、2階に子世帯が住み、玄関も水回りも全て世帯ごとに別のものを用意している。
では室内で世帯間がまったく行き来できないかといえば、さにあらず。1階親世帯のキッチン奥にある納戸が、2階子世帯の玄関(1階)奥の納戸とつながっているのだ。
これなら、いざどちらかに何かあった場合、いちいち外に出なくとも行き来できる。
この家のつくり手であるY’sは、二世帯住宅を建てる際、部屋の配置がどれだけ別々になっていても、必ず家の中に行き来できる場所をつくるよう心がけているという。
建てた直後は問題がなくとも、将来は行き来の必要が生じる可能性があるからだ。
住まい手からの要望を言葉通り実現するだけでなく、先々を見越して提案ができる。それができて、初めて住まいづくりのプロと言えるのではないだろうか。
庭先が大事な交流の場
住まいにとって、庭は近隣との間をとりもつ大事な要素である。
道行く人の目を楽しませるのはもちろん、緑を媒介に、外部の視線からプライバシーをまもり、近隣の方々との交流のきっかけにもなる。
そしてこの家の場合、世帯間の交流の場でもある。
庭の手入れが好きな親世帯と、その前を通って外出する子世帯が視線を交わす。それだけでも互いの平穏無事が確認できるのだ。
こうした役目を果たすため、竹垣を巧みに利用して、親世帯と子世帯の動線が整然と整理されている。
上物を建てた残りの予算で外構を、などとはとても言えない大役を理解した、つくり手の気配りがうかがえる場所だ。
作庭は施主のお父様のDIY
2階バルコニーを設けるだけの必然性
近頃は木造住宅でも2階にバルコニーを設ける事例が増えてきた。
いくら防水技術が発達したとはいえ、木造という柔らかい構造では雨漏り対策が重要であり、よほどの必然性がない限り、おすすめしにくいことは確かだ。
この家にも、子世帯が住む2階に、物干しに利用できる6畳ほどのバルコニーがあるが、心配は無用。板金防水によって、屋根と同等の性能が確保されている。
せり出したバルコニーの下には子世帯の玄関、その隣に親世帯の寝室があり、バルコニーが日除けの役割を果たす。また、子世帯の玄関正面にはバルコニーを支える壁を兼ねた外部収納が用意されている。
外部収納は1畳ほどの広さで、宅配ボックスやペレットストーブの燃料として使うペレット置き場として使われている。
収納の背中にあたる壁が、南側隣地や、その先にある道路からの目隠しでもある。
ここまで機能を兼ねて初めて、2階バルコニーを設けるだけ必然性が生まれるのだ。
手摺はY’sデザインの特注品
外部からの目隠しを兼ねた外収納
1階と2階で部屋の配置を変える理由
マンションやアパートで往々にして問題になる上階からの物音。
二世帯住宅もご多分にもれず、上階で夜間にたてる音が下階に響くこともあるだろう。
そこでY’sでは、少しでも音が気にならないよう部屋の配置を工夫している。
親世帯の玄関が南東、子世帯の玄関が南西にあるのもそのためである。
階段や寝室、キッチンの場所も、上下階で微妙にずらしている。
ただしリビングが上下階ともほぼ同じ位置にあるのは、あまりに物音が聞こえないよりは、多少なりとも気配が伝わることが世帯間のコミュニケーションにつながるだろうという配慮。つくり手のさじ加減の妙である。
個人情報の関連で間取りは未掲載ですが、階層型の二世帯住宅の場合、個々の配置関係は重要
外壁材の適材適所
近年ハウスメーカーがつくる住宅は、部屋の配置や使い勝手の進境著しい。ただ、建築家のデザインに慣れた目には、どれも外観が間延びしているように映る。
その点、Y’sのつくる住まいは違う。
たとえば、この家の外壁は左官による木摺下地漆喰+掻き落とし仕上げと板張りを併用している。
左官仕上げと板張りの使い分けについて、Y’sは住まい手がメンテナンスできる場所を板張りにしている、とのこと。
この2種類の外壁材によるコントラストが、深く軒を出した屋根や庇によってもたらされる陰影と相まって、外観のデザインを引き締めるのだ。
決して、視覚的な美しさを優先させた住まいではない。それでも、これだけの外観デザインができるのは、地域に根ざした工務店の底力というほかない。
設計は、決してデザインからは入るのではなく、使い勝手が良いプランニングが良いデザインになる
現代のテーマに挑んでこそ現代民家
思い起こせば、かつて日本の住まいは多世帯が当たり前であり、「二世帯住宅」という言葉自体、1975年にヘーベルハウスが同名の商品化住宅を売り出すまで存在しなかった。核家族の住まいが大多数を占める現代ならではのテーマといえるだろう。
そこに挑みつつ、地域の気候風土を反映し、できるだけ地域周辺の素材を用いたこの住まいに、私は現代民家のあるべき姿を見出すのだ。
次回、室内編 ② 2-2に続く・・・
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