家づくりを計画されている方々は、家に対する想いや希望も様々かと思います。『耐震性能?』『断熱性能?』『デザイン?』『コスト?』など、色々なご要望があると思いますが、今回は、外壁を《焼杉板》で張り、仕上げを希望された方の事例をご紹介させて頂きます。
そもそも《焼杉板》とは何でしょうか?文字通り、杉の板材を火で焼き、表面を炭化させ、耐水性に優れた材であり、基本的にはメンテンスフリーで、日本に古来から伝わる建材でもあります。昨今の白い壁…の家とは違い、見た目から、伝統的な風合いもありながら、近代モダン、カジュアル的なデザインにもなるだろう、古くて新しい日本伝統の材でもあります。
外壁は焼杉、少し見える材は、軽く100年オーバーのケヤキの古材です
住まい手からのご要望が、平屋建て、《焼杉板》を全ての外壁に採用されたいとの希望からプロジェクトがはじまります。
昨今、いわゆるハウスメーカー系や建売住宅で採用される事が多いだろう、窯業系や金属製のサイディングなどを街で見かけますが、最近では、無垢材の外壁材を採用されているお宅も多くなってきました。無垢材の外壁材を希望されている方々の多くは、木の無垢材が持っている、見た目の暖かみや安らぐデザインがお好みなのでは無いでしょうか?
しかし、ここに大きな盲点があります!
見た目だけの良さで、無垢材の木板外壁を採用されては大変危険なのです。それは、木自体のもつ特性にあります。通常、外壁に張る板材は厚さ15~20mm程度の板材を用いる事が多いのですが、その板だけを外壁に張った家は、夏暑く・冬寒い家になってしまうのです。木自体は、温まりやすく、冷めやすい性質もありますので(コンクリートや金属よりはマシですが)、夏は木自体が蓄熱をしてしまい、室内側に輻射熱を発し、室内は高温となり、冬はその逆の現象が起き、とても寒く、室内は冷える事になります。
それを防ぐ為に、断熱材を多く入れる?
外板材の厚さを厚くする?
どちらも現実的ではありません。寒い暑いを防ぐ為に、不要な量の断熱材を入れる事も材の厚さを厚くする事も実際の家づくりには適していません。本来のログハウス(ログハウス風は×)の様に太い丸太を使用した作りの場合は、厚さに比例し、冷めにくい効果が得られる為、少ながらず改善は出きるかも知れませんが、どれも効果的な方法では有りません。そこで・・・今回の家づくりでは、Y’sの真骨頂とも言える【土壁】を優先して採用して頂ければ、木板壁の焼杉材でも快適な、温熱環境を整えた住空間が得られると判断した上で、お勧めし、採用をして頂きました。
Y’sでは、土壁の下地に竹小舞では無く、杉材の木摺を採用しています。
木摺下地に土(荒壁)を直接塗っていきます。
《焼杉板》を寒い、暑い、風雨などに晒されるなど、過酷な条件である外部の壁は、さながら人間で言う所のアウター(服)ではないでしょうか?冬の寒い時期にダウンジャケットなどを羽織りますが、板壁は厚い、寒いの影響を受けてしまう材でもあるので、ダウンの様な効果は得られません。そこで【土壁】を板壁の下、壁の中(人間で言えば皮膚や筋肉でしょうか?)で設置する事により、土の持つ熱しにくく、冷めにくい性質を活かし、夏は外気→板壁に伝わった熱を遮断し、冬は室内の暖気を土壁自体が蓄熱するなどして、室内は、快適な住環境を作り出すことが可能になります。
余談ではありますが、皆様のご希望のひとつで、広いウッドデッキを希望される方が多いのですが、弊社では、基本的にNGとしています。皆様のイメージでは、夏場など気候が良いときに、ご家族やお仲間でウッドデッキでランチやバーベキュー!と考えているかと思いますが、実は、夏場などの高温時に、熱の影響を受けてしまう木自体が蓄熱をしてしまい、杉材など比較的に空気層を多く持ち、熱の影響を受けにくい樹種材でも、夏場は60度ほどの熱を持ってしまいます。ようは熱くて、居られないのです。間違ってその床板に打ち水でもしようものなら、、、熱い水蒸気がたつだけなのです・・・。
今回は、板壁の持つ、弱点を補う方法を【土壁】を用いる事で補う事が出来ると共に、土壁の持つ性質で、湿度の高い夏場など、壁自体が湿気を吸収してくれる為、室内環境は、低湿度となり、非常に快適な住空間ともなります、いくら室内に木壁にしても、同様の効果は得られません!勿論、ビニールクロスよりは、木板壁のほうが湿度にも反応し、遥かに優れていますが、あくまでビニールクロスが湿気には対応出来ない性質の材なので・・・なんともです・・・。
室内側から塗り始め、次に室外側から再度塗り(裏返し)を行います。
まとめ・・・
今回のお宅の様に、平屋建てで、全ての外周壁面に焼杉を採用されたいとのご希望もあり、少なくとも外周面全てに土壁を採用して頂きましたが、住空間の温熱に影響を及ぼさない少ない箇所で少しだけ、デザインの観点で木板を採用されたいのであれば、何も全て土壁で外周部を覆う必要もありませんが、焼杉板と違い、他の無垢材板壁は、多少なりとも定期的なメンテンスも必要になる為、余り、デザインを優先させ、本来の住まいに必要な性能をないがしろにして欲しくは無いとの思いで、今回の内容とさせて頂きました。逆に板壁で無くとも、土壁は日本の気候風土に一番適した材であり、工法でもありますので、是非、今後の家づくりの参考にして頂ければ幸いです。
次回は、今回ご紹介をさせて頂いた《焼杉の平屋建》の完成画像を御覧頂きたいと考えています。
是非、参考にして頂ければ・・・
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